2017年7月30日

ビットコインは通貨として生き残るのか?


世間ではビットコインの分裂騒動が話題になっていますが、その話ではなく、

この本を読み終わってのメモです。




『これでわかったビットコイン [生きのこる通貨の条件]』 斉藤 賢爾  (著)


2014年の本ですがこれからビットコインについて知りたいという人には十分役に立ちます。

本書は「入門編」「使い方編」「そもそも編」「しくみ編」の4部で構成されています。この中で「そもそも編」ではビットコインに否定的な意見を持つ筆者の視点を知ることが出来ます。

BTCの発行量上限が2100万と決まっている事について、筆者は「インフレ撲滅への開発者の強い意志」が反映されたものだと述べ、「でもそもそもインフレって悪いこと?」と疑問を投げかけます。

"たしかに、貨幣を持っている人たちにとっては重大な問題でしょう。みずからの資産が目減りしていくことを意味しているからです。" (p.66)
"逆に、デフレ状態では、商品にたいして貨幣の価値が相対的に上がります。これは富める者たちにとっては資産が自動的に増えることを意味します。" (p.66)
"ビットコインではデフレが起きるような設計がされていますが、うがった見方をすると、富める者たちがそれを利用してさらに儲けようとしている、ともいえるかもしれません。" (p.66) 
"貨幣が希少で、かつ、貨幣がなければ何もできない世の中に生きていると、私たちは、どうにかしてそれを手に入れなければならなくなります。そして、貨幣を持っている人の言うことを聞くようになります。それは、自分が支配される立場におかれることを意味します...(略)" (p.69)

「通貨・貨幣とはなにか」について自分なりに考える良いきっかけになりました。

たしかに、発行数上限が近づくにつれて希少性が上がり「先行者有利」なまま「持てる者」と「持たざる者」の格差が指数関数的に広がっていく現状のビットコインの設計については、「これが本当に最善なのか」今一度じっくりと考えないと行けないのではないかと思いました。


この辺りの「より良い通貨の設計」というテーマについては岩村充教授の『中央銀行が終わる日: ビットコインと通貨の未来』でより詳細に議論されているのでこちらも一緒に読むと面白いです。



ビットコインのPoWの仕組み等についてさらに詳細に知りたい方には大石哲之さんの『ビットコインはどのようにして動いているのか?』(Kindle本)がオススメです。