2019年1月13日

React/TypeScriptでリバーシゲームを作る (3) - 思考ルーチンその1

前回はリバーシのルールを実装して、人対人の対戦が出来るようになりました。

今回は、一人でも遊べるようにコンピュータの思考ルーチンを実装します。


動くものはこちらです。
https://reversi-d1kqojbar.now.sh/




タイトル画面でレベル1〜3が選べるようになっています。
(現段階ではどれを選んでも実際には難易度は同じです。)

ゲーム画面は前回と同じですが、コンピュータの手番になると自動的に思考ルーチンが呼び出され、
結果が出るとその座標に石を配置します。




現時点でのソースコードはこちらにあります。
https://github.com/mikehibm/reversi-react/tree/blog-3


さて、コンピュータとの対戦を実現するにあたって工夫する必要があるのは、「思考ルーチンを別スレッドで動かして、UIをブロックしないようにする」ことです。


通常ブラウザ上で動くJavaScriptアプリケーションでは一つのスレッドしか使えないので、時間がかかってCPUパワーを消費する処理を行うとその間UIが固まったりカクカクした感じになったりして操作性が悪くなります。

これを防ぐために、「Web Workers API」を使います。


ReactでWeb Workersを使う方法は、下の記事に書いたとおりです。

Create React AppでWeb Workerを使うには

この記事で調べた、「WorkerのJSファイルをBlobとして読み込んでからWorkerスレッドを生成する」という方法を使うことにしました。


ひとまず基本的な仕組みを実装することに主眼を置いたので、思考ルーチンの内容は単に「配置可能な座標のなかからランダムに選ぶ」だけの動作になっています。この処理だと実際には一瞬で終わってしまうのでWorkerスレッドを使う意味は全くありません。

Workerスレッドを使う意味があるような、もっとヘビーにCPUを使う思考ルーチンへの改良については、次回以降の記事で書くことにします。


playersフォルダ内のcomputerPlayer1.tsを見ると、thinkProc() という関数があり、そこに思考ルーチンの実態が入っているのが分かります。
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この thinkProc関数を createWorker というユーティリティ関数に渡すことで thinkWorkerという名前のWorkerスレッドを作成しています。
const thinkWorker = createWorker(thinkProc);


対戦中にコンピュータの番が来たときには、

const result = await thinkWorker.execute({ board: { cells: board.cells } });

のように execute()メソッドを呼んで思考ルーチンを起動しています。このexecute()メソッドというのは、JavaScript標準のWorkerクラスを継承して作成した独自クラスで定義したメソッドで、 Workerクラスの postMessage()を呼んだ後のイベントハンドリングを抽象化したものになっています。


思考ルーチンの処理が終わると、戻り値のresult変数にはコンピュータが選択した座標が入っているので、後は人間がクリックした時と同じように store.setStone(result) を呼んでその座標を渡します。そうすると store内部で盤面の状態が適宜更新されてイベントが発行されるので、それを受けて画面の表示が自動的に更新されることになります。



ここまででコンピュータとの対戦機能を実現するための基本的な仕組みを実装することが出来ました。次回はそれなりに強い思考ルーチンを作ることにチャレンジしたいと思います!




React/TypeScriptでリバーシゲームを作る


(1) - ボードの描画と石の配置
https://blog.makotoishida.com/2018/10/reacttypescript.html

(2) - ゲームロジック
https://blog.makotoishida.com/2018/11/reacttypescript-2.html

(3) - 思考ルーチンその1
https://blog.makotoishida.com/2019/01/reacttypescript-3-1.html

(4) - 思考ルーチンその2
https://blog.makotoishida.com/2019/03/reacttypescript-3-2.html

(5) - アニメーション
https://blog.makotoishida.com/2019/03/reacttypescript-5.html







 

2018年11月15日

Create React AppでWeb Workerを使うには

「Web Worker」を使うと、ブラウザ上のJavascriptでも複数のスレッドを使うことが出来るようになります。


Web Worker を使用する - Web API | MDN https://developer.mozilla.org/ja/docs/Web/API/Web_Workers_API/Using_web_workers#Web_Workers_API


これによって、CPU負荷の高い計算処理などを別スレッドで実行することで、画面の反応が鈍くなったりするのを防ぐことが出来ます。


今回は、Create React Appで作成したプロジェクトでWeb Workerを使う方法を調査しました。


1. publicフォルダにWorkerのJSファイルを配置して読み込む。


⇒ 最も基本的で単純な方法です。publicフォルダに配置したファイルはそのままデプロイされるので下の方法で素直に読み込んで使うことが出来ます。

const myWorker = new Worker("worker.js");
myWorker.postMessage("hoge");


短所としては、TypeScriptやES2017などを使っている場合は別途自分でビルドしてpublicフォルダに配置する必要があることが挙げられます。


2. ejectしてからWebPackの設定に worker-loader または worker-plugin を追加する。


⇒ worker-loaderを使うと、別スレッドで動かしたい処理をModuleとして作成しておいて、使いたい箇所でそれをimportしてnewするだけでWeb Workerとして動作するようになります。コード例は、下のようになります。

import HelloWorker from './hello.worker.js';
const helloWorker = new HelloWorker();
helloWorker.postMessage('hoge');

詳細はこちら。
Add support for WebWorker with worker-loader (#3660) by iansu · Pull Request #3934 · facebook/create-react-app 

worker-plugin を使う場合はこんな感じ。

const worker = new Worker('./worker', { type: 'module' });
worker.postMessage('hoge');

詳細はこちら。
Add support for WebWorker with worker-plugin by Krivega · Pull Request #5464 · facebook/create-react-app  




3. ejectせずに react-app-rewired を使ってWebPackの設定に worker-loader または worker-plugin を追加する。


⇒ 下のブログ記事にejectせずに上の2と同じ事をする方法が書かれていました。

How to use web workers with react-create-app and not ejecting in the attempt

ただ残念ながら、react-app-rewiredは最近のVersionには非対応なのでこの方法は現在は使えないようです。


4. WorkerのJSファイルをBlobとして読み込んでからWorkerスレッドを生成する。


⇒ 下のissueへのコメントで紹介されている方法です。

Is it possible to use load webworkers? · Issue #1277 · facebook/create-react-app

関数をtoString()で文字列化して、さらにそれをBlobにします。こうすると、WorkerのコンストラクタにObjectURLとして渡してWorkerインスタンスを生成出来るようです。

let code = worker.toString();
code = code.substring(code.indexOf("{")+1, code.lastIndexOf("}"));
const blob = new Blob([code], {type: "application/javascript"});
const worker = new Worker(URL.createObjectURL(blob));

少々トリッキーですが、試してみたところ少なくともMacのChrome/Safari/FireFoxでは問題なく動いています。

この方法なら、WebPackの設定を変更する必要がありません。また上記1のようにWorkerのJSファイルだけ自前でビルド・配置したりする必要もありません。

具体的なコード例は後述します。


5. 公式にサポートされるまで待つ。


⇒ 上の2で挙げた方法がPull Requestとして上がっており公式にも検討されているみたいですが、どうやらブラウザ互換性の問題(?)があるようで2018年11月時点ではまだマージされるには至っていません。将来的には公式にサポートされる可能性はあるので、気には止めておいた方が良いかも知れません。

Add support for WebWorker with worker-loader (#3660) by iansu · Pull Request #3934 · facebook/create-react-app 

Add support for WebWorker with worker-plugin by Krivega · Pull Request #5464 · facebook/create-react-app 



今回は上記4の方法を試してみたので、以下に紹介しておきます。

WorkerのJSファイルをBlobとして読み込んでからWorkerスレッドを生成するサンプル


index.jsと同じフォルダにcreateWorker.js, myWorker.jsの2つのファイルを作成します。

createWorker.js

---

myWorker.js

---


createWorkerとmyWorkerをimportして、下のようにすることでWorkerスレッドが使用可能になります。

import createWorker from './createWorker';
import myWorkerFunc from './myWorker';
const myWorker = createWorker(myWorkerFunc);


index.js

---









2018年11月4日

React/TypeScriptでリバーシゲームを作る (2) - ゲームロジック

前回はボード上に石を配置するまでを実装しましたが、今回はさらにリバーシのルールを実装して実際に遊べるようにしたいと思います。


実際に動いているものはこちらで試すことが出来ます。
https://reversi-d1kqojbar.now.sh/




ゲームのルールを実装するには、大まかに分けて次の4つの処理が必要になります。


  1. 「次に石を配置可能な場所」の判定と表示
  2. 挟まれた石を裏返す
  3. 石を置ける場所が無い場合の「パス」処理
  4. ゲーム終了判定と勝敗の表示


1. 「次に石を配置可能な場所」の判定と表示


各手番が始まったときに、ボード上の全てのCellをループして次の処理を行います。


  • 現在のCellからタテ・ヨコ・ナナメ全ての方向に向かってひとつずつ次のCellの色を確認する。
    • 相手の石が置かれていたら、一時的な配列(arr)にそのCellの座標をプッシュして、さらにその方向の次のCellを確認。
    • 自分の石が置かれていたら、その方向への探索を終了。
    • 空白なら、その方向への探索を終了。
    • 座標がボードの範囲外に出た場合は、その方向への探索を終了。
  • 上の処理で最後に自分の石が見つかった場合で、かつ配列arrに要素が含まれている場合は、「挟める対象の相手の石が見つかった」ということなので、そのCellを「自分の石を配置可能なCell」としてマークしておく。(cell.placeableプロパティにtrueをセットする。)


Cellコンポーネントでは、対応するCellオブジェクトのplaceableプロパティが属性として渡されてくるので、その値がtrueの場合は、小さな黄色の円をSVGのcircleタグを使って表示するようになっています。


2. 挟まれた石を裏返す


プレーヤーがCellをクリックしたときには、CellコンポーネントのhandleClick()メソッドが実行され、さらにstoreのsetStone()メソッドにクリックされたCellの座標が渡されます。

store側では、Cellのplaceableプロパティがtrueでない場合は、そこには石を配置出来ないので何もせずにreturnしています。

そうでない場合は、クリックされた場所およびそこを起点として裏返し対象になるCellのcolorプロパティを全てプレーヤーの石と同じ色に変更します。

「裏返し対象のCell」というのは、あらかじめ上の「次に石を配置可能な場所」の判定処理の中で見つかったCellの座標一覧をcell.turnableCellsというプロパティに格納してあるので、それをループすることで取得できます。

裏返し対象のCellのcolorプロパティを全て変更する処理が終わった後、getNextTurn()メソッドを呼んで次のプレーヤーに手番を交替しています。

最後に'board_changed'イベントを発行して、各コンポーネントの描画を更新しています。



3. 石を置ける場所が無い場合の「パス」処理


現在の手番で石を置ける場所が見つからない場合は、ボードの placeableCount プロパティが 0 になります。

その場合は、ひとまず alert()でメッセージを表示した後、storeのskipTurn()メソッドを呼んで手番を「パス」します。

この処理はゲームの進行に関わる処理なので、Gameコンポーネント内で行っています。

skipTurn()メソッドの中では、ボードの状態を変更せずに、単に現在の手番を示す turn プロパティを更新して'board_changed'イベントを発行しています。



4. ゲーム終了判定と勝敗の表示


Gameコンポーネントでstoreから'board_changed'イベントを受け取った時に、finishedプロパティがtrueであればゲーム終了なのでその旨をalert()で表示します。

finishedプロパティがtrueになる条件は、以下の通りです。

  • 空白のCellが無くなった。
  • 黒または白のどちらかが全滅した。
  • 両者とも置く場所が無くなった。


ボードの状態を更新する際にこのいずれかに当てはまるかどうかを毎回チェックしてfinishedプロパティの値をセットしています。



以上でリバーシのルールを実装して実際に遊べる状態にまで持って行くことが出来ました。

次回は、コンピュータの思考ルーチンを作成してコンピュータとの対戦機能を追加したいと思います!


今回の時点でのソースコードはこちら:

https://github.com/mikehibm/reversi-react/tree/blog-2




React/TypeScriptでリバーシゲームを作る


(1) - ボードの描画と石の配置
https://blog.makotoishida.com/2018/10/reacttypescript.html

(2) - ゲームロジック
https://blog.makotoishida.com/2018/11/reacttypescript-2.html

(3) - 思考ルーチンその1
https://blog.makotoishida.com/2019/01/reacttypescript-3-1.html

(4) - 思考ルーチンその2
https://blog.makotoishida.com/2019/03/reacttypescript-3-2.html

(5) - アニメーション
https://blog.makotoishida.com/2019/03/reacttypescript-5.html